3月26日、歌会始の儀に向かう眞子さま(C)朝日新聞社
3月26日、歌会始の儀に向かう眞子さま(C)朝日新聞社

「ちぐはぐさを感じるお歌ですね」

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 和歌の研究者のひとりは、秋篠宮さまの長女、眞子さまの和歌に、そう感想を漏らした。

 3月26日、コロナ禍で延期されていた皇室の新年行事、歌会始の儀が宮殿松の間で執り行われた。お題は、「実(じつ)」。

 眞子さまは、幼い頃から色合いがお好きだという烏瓜の実を詠んだ。 

<烏瓜その実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に>

 秋の深まりを表現した和歌だが、先の研究者は、矛盾する要素が織り込まれていると指摘する。

 まず、寒色を連想させる『冴ゆる』に暖色に属する『朱の色』が続く。     
また、『冴ゆる』は、鋭さや瞬間的な要素を持つ言葉でもある。じっくりとした時間の流れが伝わる『染まりてゆけり深まる秋に』という後半の句とも対照的である。

「詠んだご本人も、意識しておられると思います。烏瓜は、俳句などではよく選ばれる題材ですが、名前の通りやや俗っぽく、古典的な和歌にはあまり登場しません。皇室の状況は承知しておりませんが、現実に馴染めない思いや葛藤が、にじむ和歌だと感じました」

 小室圭さんとの結婚問題が注目を集めている眞子さまの和歌だけに、状況に重ねて受け止められるのは、やむを得ない部分もあるだろう。

 ある宮内庁幹部も、率直な印象を吐露する。

「『染まりてゆけり』は、恋が深まっている思いを表現しておられると感じました。現実には、出口が見えない状況ではありますが」 

 歌会始めの儀では、宮家の皇族方、そして皇后陛下、最後に天皇陛下の順に和歌が披講される。

<感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし>(皇后陛下)

<人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る>(天皇陛下)

 和歌とは祈りであるー。和歌文学の専門家である渡部泰明東大教授は、日頃からそう説いている。

「皇后さまの和歌で印象的であったのは、最後の『梅の実あをし』の表現です。まだ青い実は、終息していないコロナを重ね、結実への願いにも受け取れます。陛下の和歌は、あえて技巧を凝らさない『帝王振り』と表現される天皇の和歌そのものです」

 この日、宮殿・松の間には、祈りにふさわしい、和歌の調べが響いた。 

(本誌・永井貴子)

※週刊朝日4月9日号より