そのため、モラハラで離婚を望む人には、別居が一番だという。別居期間が長ければ、客観的に見ても婚姻生活が破綻していることは明らかで、民法770条の『その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき』に該当すると判断されるからだ。

「別居という既成事実を作るほうが早くて確実。ただし、結婚生活が長いとその分、別居期間も長くないと認められません。別居中も相手に婚姻費用分担請求ができるので、生活費はある程度確保できます。相手が拒めば調停や裁判で認めさせることになります」(同)

 シニア夫婦の離婚は、結婚後の財産が折半されるため、慎重にすべきだと中里弁護士は言う。

「二人で共有して使えていたものが半分になると、思った以上に少ないと感じるはず。生活水準が落ちても一人がいいなら別ですが、亭主元気で留守がいいと割り切ったほうがいい場合もある」(同)

 モラハラ相談は妻からだけとは限らない。離婚相談や関係修復の夫婦カウンセリングを行うピリアロハカウンセリングの緒方リサコさんによると、男性からのモラハラ相談が増えたという。

「以前は女性が大半でしたが、今や男女半々。妻が実家時代から築き上げた価値観を夫に押し付け、夫を否定する事例は多いです。夫が『稼いでるのは俺だ』と経済的なモラハラをすることがありますが、専業主婦の妻が、『家事労働をお金に換算するとこんなになる。私だけに押し付けるな』などと強気で男性に責任転嫁することがあります」

 もちろん夫から妻へのモラハラも健在だ。

「男性に多いのが、『うちの奴は馬鹿で』と人前でけなすこと。本人は謙遜のつもりでも、妻は傷つきます」(緒方さん)

 特に、シニア世代は夫が絶対で、妻は従うのみという価値観に漬かっていただろう。そのため、つらくても自分の中に抑え込むしかなかったかもしれない。しかし、精神的暴力や嫌がらせは確実に心を傷つけていく。

 振り返れば、「あれがモラハラだったかも」と気づくこともあるはずだ。「モラハラチェックリスト」で、相手の言動を改めてチェックしてみよう。

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