※写真はイメージです (GettyImages)
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 感染対策中心の生活が続いて1年。

「もの忘れがひどくなったという相談は以前より増えているという印象です。自粛生活などが影響しているのだと思います」

 と話すのは、都内のある区の地域包括支援センター担当者。この区では年に4回「もの忘れ相談」などを実施し、必要な家庭には訪問している。しかし、コロナ禍で訪問を断る家も多く、どのような対策を取るかがこれからの課題だという。

 日本認知症予防学会が会員(医療・介護従事者)を対象に実施したアンケートでは、半数近くが新型コロナの流行前と後を比べて「担当する高齢者の認知機能が悪化した」と答えた。

 人と会う機会が減り、社会とつながる場にもなかなか行けないなか、こうした生活とうまく付き合いながら、脳の健康を保っていくにはどうしたらいいか。“チョイ足し”予防法を紹介しよう。

【1】音読
 新聞を読んだり、読書したりする習慣がある人は、声を出して読む。この音読を勧めているのは、日本認知症予防学会理事長で、『科学的に正しい認知症予防講義』の著者の浦上克哉医師(鳥取大学医学部教授)だ。

「音読では視覚だけでなく聴覚も使います。声を出すので口や舌を動かす必要もあります。いろいろな機能を使うことで、脳の前頭前野という部分が刺激されます。黙読より音読のほうが記憶は定着しやすいこともわかっています」

 浦上医師は以前、音読の効果を調べたことがある。すると普通に黙読した人たちより認知機能の低下が抑えられていたという。

 家族にうるさがられないか心配になるかもしれないが、朗読と違って人に聞かせないので、小さな声でも問題ない。

【2】香り生活
 もう一つ、日常生活に加えたいのが“香り”。

「実は、認知症の一つであるアルツハイマー病は、匂いを感じる嗅覚(きゅうかく)神経のダメージから始まり、その後、記憶に関係する海馬に及びます。嗅覚を回復させることで、認知症予防が期待できます」

 と浦上医師。脳と匂いの関係に着目し、認知症にアロマセラピーが有効であることを発見。脳神経細胞を活性化するアロマオイルを朝に、その脳神経細胞の疲れをとって回復を図るアロマオイルを夜に使うと効果的であることを突き止めた。

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