「早稲田も医学部創設の話がありますが、もたついています。慶應は看護医療学部を作り、薬学部を合併し、サクサクと医療系総合大学に発展していきました。早稲田も東京女子医科大と連携するなど取り組んでいます。ただ、学内で連携できる慶應とは差がつくでしょう」

 慶應の序列で最下位に沈むSFC2学部(総合政策学部、環境情報学部)も上昇傾向にある。湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)の頭文字を取ってSFCと言われる。

 両学部とも90年に創設され、日本で初めてAO入試(現・総合型選抜)を導入。外国語教育やコンピューター教育、ディスカッションなどの双方向授業に力を入れ、看板学部にのし上がった。その後、そうした特徴も他大学で取り入れられ、独自性は薄れた。都心から離れた立地の悪さや就職率の伸び悩みなどから、人気は落ちた。

 しかし、状況は変わりつつある。例えば慶應義塾高からSFCに進学した生徒は、19年の20人から20年は74人に増えた。学びの魅力に注目が集まっているとされる。推薦・総合型選抜の対策を専門にする洋々の清水信朗代表が説明する。

「AOの志願者は増加しています。教員の入れ替えが多く、第一線で活躍する旬な人が授業を持っていて、学生の満足度は高い。1期生が50歳を超えるころ。卒業生の活躍の姿が見えてきているこれから、より人気が高まると思います」

 最後に20年後の序列を見ておこう。文系学部では早稲田に勢いがあり、特に社会科学部の上昇が目覚ましい。政治経済学部と並ぶ看板学部になり、両学部は慶應の経済学部、法学部よりも上位に来る。スポーツ科学部は文学部より人気を集め、上位と下位の学部の差はなくなっていく。

 慶應では医学部を筆頭に理系学部がブランドを牽引(けんいん)する。そのなかでSFCも人気が急上昇する。井上さんはこう見る。

「SFCは文系学部だけでなく、理工学部など理系学部とも比較されています。こうした比較は、慶應の経済学部や早稲田の政治経済学部など最難関学部ぐらい。SFCは早稲田の社学並みか、それ以上の大出世学部になる可能性を秘めています」

(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2021年4月2日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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