家電量販店を展開するノジマ(横浜市)は昨年7月、65歳の定年後の再雇用契約を「最長80歳」まで延ばせる制度を採り入れた。本社の事務職や店舗の販売員など社員約3千人が対象だ。本人が希望すれば、健康状態を確認したうえで1年ごとに契約を更新できる。

「パートやアルバイト、契約社員も含め、もともと65歳の定年を過ぎた社員の雇用継続に取り組んできましたが、正式な制度として位置づけました」(同社広報担当者)。今では、最高齢79歳の女性販売員もいるという。

 富国生命が昨年3月にインターネットによる20~60代の男女1250人を対象にした調査がある。「何歳まで働きたいか」を聞いたところ、「70歳以上」が18%、「65~69歳」が17%、「60~64歳」が24%だった。

 60歳を超えても働きたいと考える人は合わせて6割近く、「健康である限り」の24%を含めると8割にも達した。

 シニア社員は実際、どのように働き、満足感を得られているのだろうか。

 損害保険ジャパン(東京都新宿区)では、派遣社員となった70代男性が、20代の女性社員のもとで働いている。男性は現役時代、同社でコンピューターシステムの開発などに携わってきた。

「話しやすい雰囲気をつくってあげるのが年上の役目。そうすると、若い人でも話しかけてくれる」と男性。女性も「私から指示して対応していただくのに、お願いしづらいことはない。壁をつくらないようにしてくれて、仕事がしやすいです」。

 同社は社員約2万5千人のうち、60代以上は6%超。18年4月から70歳まで働けるようになっている。

 定年は60歳だが、65歳までは「エキスパート社員」として現役時代の6~7割の年収で働くことができる。本人の希望に応じて、週3日の勤務や1日4時間勤務など柔軟な働き方が選べる。例えば、ある男性社員は週4日の時短勤務で、大学院に通いながら、外部から依頼されれば企業研修の講師という「副業」もこなし、充実した日々を送っているという。

 66歳以上は、「行動評価」と「仕事評価」で一定基準を満たせば雇用される。実際には、対象者の上位2割ほどの優秀な層に絞られるという。「『年下の上司』や『年上の部下』といった年功序列の枠から外れた上下関係が生まれることになりますが、誰に対しても“さん”づけで呼ぶ雰囲気が自然に生まれ、違和感なく社内に浸透しています。上司だった当時の意識を捨てきれないような方は、60代前半で本人がお辞めになっていきます」(人事担当者)

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