※写真はイメージです (GettyImages)
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4月に変わる定年とシニアの働き方のルール (週刊朝日2021年4月2日号より)
4月に変わる定年とシニアの働き方のルール (週刊朝日2021年4月2日号より)

 シニアが働く機会はさらに増える。少子化で高齢者が大事な働き手として期待され、4月1日に「70歳就業法」が施行されるからだ。

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 同法は企業に対し、希望する社員が70歳まで働けるようにする「努力義務」を課す。従来は65歳までの定年の延長、再雇用、定年の廃止の三つのいずれかを義務づけていたが、今回の改正で65歳としてきた年齢が70歳までに延びる。そして新たに、ほかの会社への再就職の支援、業務委託契約の締結、起業の後押し、社会貢献活動への参加支援といった四つの対応も選べるようにした。

 企業には、これに呼応するように動きが出ている。

 YKKグループ(東京都千代田区)は、国内の事業会社で今まで65歳に向けて引き上げてきた定年制を4月からやめる。YKK執行役員の亀山秀夫人事部長は、新しい人事制度を導入する狙いをこう説明する。

「2013年度から段階的に定年を延長してきましたが、年齢だけを基準として自動的、一律的に退職の時期を決めるのは公正ではないと考えました。変化の激しい時代には多様な人材が必要。シニアの活用はその柱の一つ。年齢にかかわらず、会社が求める役割や職務を軸に評価や活用ができる仕組みにしたい」

 化学品や情報システムなどを扱う商社の三谷産業(金沢市)も4月から、65歳を上限にしていた定年退職を事実上、廃止する。社員が希望すれば原則として無期限に働くことができる。

 65歳以降は1年ごとに契約を更新する形だが、半年ごとに目標を立て、達成すれば賞与も上がる。逆に、「評価が下がれば減給もあり得る」(人事担当者)。自分の実力が半年ごとにわかる仕組みで、会社が必要とする役割を果たせないままだと自然に淘汰(とうた)されていく。

 建機大手のコマツ(東京都港区)は4月、「選択定年制」を導入する。一律60歳の定年を改め、一般職であれば「60歳か65歳」、管理職であれば「60歳か62歳」のいずれかを選べるようになる。定年後、パートタイムで働く再雇用社員には副業も認める。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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