林:あの美貌でヌケヌケと喜劇をやっちゃうところがね。確かに「乱歩シリーズ」も、満島さん、なんか変だもんね(笑)。

満島:アハハハハ。もともとの私は、ふざけた人なんです。愛情たっぷりの道化でいたいという面もあって、「ピエロな人生もいいな」って若いときから思ってます。

林:「ピエロな人生」ってどういうこと?

満島:どういうことでしょう(笑)。10歳で出会った自分を表現できると感じた場所が、芸能の世界につながって、歌とダンスが大好きだっただけのことがお仕事になっちゃって。好きだったことが義務になってしまうことを若いころに経験したので、心が苦しかった時期もあったんですね。それを経て、映画の世界で注目されたときも、また同じようにならないように、好きなことを自分で守ろうって。“旬”だと言われるたびに恐ろしくて(笑)、冒険ができなくなるより、好きなことだからこそ、迂回して力をつけたいなって思って今に至ります。真っ直ぐ縦に伸びるんじゃなくて、グルグル回りながら、しかるべきときに自然にステージが変わったらいいんじゃないかなって。いろんなことが自然に身について、クレバーだけど笑いの絶えない人生に憧れます。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

満島ひかり(みつしま・ひかり)/1985年、鹿児島県生まれ、沖縄県育ち。97年、沖縄アクターズスクール出身の音楽グループ・Folderのメンバーでデビュー。同年公開の「モスラ2 海底の大決戦」で映画デビュー。2009年に主演した映画「愛のむきだし」で鮮烈なインパクトを残し、これまでに数多くの賞を受賞。俳優業にとどまらず、朗読やナレーション、音楽、執筆の活動もする。NHK BSプレミアムで放送の、シリーズ江戸川乱歩短編集IV「新!少年探偵団」が3月23日から3夜連続放送。

週刊朝日  2021年4月2日号より抜粋