荒川さんは、松尾スズキさんが主宰する「大人計画」の所属。自粛期間中には、映像の仕事はいくつか延期になったが、松尾さんプレゼンツの「劇場の灯を消すな!」というアクリル演劇祭に出演した。中止になった舞台「もうがまんできない」も、無観客ながら本多劇場での上演が実現し、10月にオリジナル番組としてWOWOWで放送された。

「いわゆる“劇場中継”ではなく、宮藤さんが、ちゃんと画面での映りも計算しながら撮影していった。通常の舞台と映像作品の中間のような作品で、貴重な経験でした。そのとき、客席には関係者しかいなかったですけど、この『白昼夢』も、あのときと同じ本多劇場なんです。お客さんが目の前にいたら、嬉しいけど、緊張しそうだなぁ(笑)」

 現在は、長瀬智也さんが主演するドラマ「俺の家の話」にも介護施設のケアマネジャー役で出演している。バイプレーヤーとして独特の存在感を発揮するだけでなく、2008年には映画「全然大丈夫」で主演も務めた。一般的には十分に“売れっ子”の部類だが、「街を歩いていて声をかけられたりはしますけど、有名になって『よっしゃー!』とか、思ったことがないです。そもそも有名になりたいわけじゃない。俳優って人前に出る仕事ですけど、役を演じているとき以外は、普通の生活を送っていたいです」と小さめの声で話す。

(菊地陽子 構成/長沢明)

荒川良々(あらかわ・よしよし)/1974年生まれ。佐賀県出身。98年から大人計画に参加。2020年Netflixのホラー作品「呪怨:呪いの家」で主人公の小田島泰男をシリアスに演じた。05年の「タイガー&ドラゴン」と19年の「いだてん~東京オリムピック噺~」で落語家役を演じ、20年には「劇場の灯を消すな!本多劇場編」で約30分にわたる講談(作:宮藤官九郎/指導:神田伯山)に初挑戦した。

>>【後編/荒川良々 映像の“ノリの軽さ”になじめず苦悩…救われた言葉とは?】へ続く

週刊朝日  2021年3月26日号より抜粋