年金は「偶数月」に2カ月分が振り込まれる。10月改定の年金額が振り込まれるのは12月。先ほどの69歳の人だと2カ月分で約8600円の実入りが増える。特別な“クリスマスプレゼント”のようなものだ。該当者は、今から楽しみにしておかれてはいかがか。

■繰り上げ減額率0.4%に引き下げ

 さて、冒頭で取り上げた「年金繰り上げ」である。

 通常より早く年金を受け取る分、減額されることはすでに触れたが、22年4月からはその減額率が変わる。それまでは1カ月早めるごとに0.5%減額されているものが、同0.4%と減額幅が小さくなる。例えば、5年早めて60歳で繰り上げた場合、30%減だったものが24%減で済む。先の三宅氏が言う。

「ひところは知識不足もあって多くの人が繰り上げしましたが、長寿化による長生きリスクが認識されるにつれて減る傾向にあります。それが『減額率が下がるのなら……』と、また増えるかもしれませんね。足元では、新型コロナウイルスの影響で失職した人が繰り上げしているという話も聞きます」

 ただし、ここにも年齢制限がある。

 繰り上げ減額率「0.4%」を使えるのは、来年4月の改正施行時に60歳未満の人、生年月日で「1962(昭和37)年4月2日以降生まれ」(予定)に限られる。

 対象者の範囲は政令事項なので、正式にはそれを待つ必要があるが、前例などからみても間違いなさそうだ。

「同じ人が3月で繰り上げした場合と、4月で繰り上げをした場合とで年金額が大きく違ってくると、本人が有利に選択できてしまいます。そういう選択の余地がないように、『法律が変わったときに60歳に達していない人』とするのがこれまでのやり方です」(三宅氏)
 従って、22年4月1日時点で60歳以上65歳未満の人は、それ以降に繰り上げしても減額率は「0.5%」のままだ。減額率引き下げのニュースを聞いて「それなら!」と思った60代前半の人がいたとしたら、考え違いであることを知ろう。

 もっとも、勘違いしていても、冒頭のシーンのように年金事務所が誤りを正してくれる可能性が高い。

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