※写真はイメージです (GettyImages)
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(週刊朝日2021年3月26日号より)
(週刊朝日2021年3月26日号より)
(週刊朝日2021年3月26日号より)
(週刊朝日2021年3月26日号より)
「繰り上げ」「繰り下げ」の年齢別受給率 (週刊朝日2021年3月26日号より)
「繰り上げ」「繰り下げ」の年齢別受給率 (週刊朝日2021年3月26日号より)

 来年4月から年金が大きく変わる。長寿化で“長く働く”ことに対応した重要改正が多いが、制度が変わると全員が対象になると思ったら大間違い。「生年月日」で適用されるかどうかが分かれるケースが目立つのだ。勘違いしないための「改正ガイド」をお送りしよう。

【あなたは対象になる? 在職老齢年金、新基準額が適用される対象者はこちら】

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 来春以降、全国の年金事務所で、こんなやりとりが増えるかもしれない。

相談者:「年金の『繰り上げ』をしたいのですが……」

年金事務所の職員:「老齢年金は原則65歳から受け取ることができますが、ご本人のご希望で60歳から65歳になるまでの間で、本来より早く受け取ることもできます」

相談者:「わかっています。お願いします」

職員:「受け取る老齢年金は生涯にわたって減額されますが、いいですか」

相談者:「構いません。減額率が変わるのを待っていたんです」

職員:「失礼ですが、今、おいくつですか」

相談者:「61歳です」

職員:「それなら、新しい減額率は適用されませんよ」

相談者:「エッ、なぜ?」

 冒頭の「繰り上げ」とは、職員の説明どおり、本来の受給開始より早く年金をもらえる仕組みだ。ただし早くもらう分、年金額は減額される。どうやら、その「減額率」をめぐって相談者は何か勘違いをしているようだ。

 その勘違いの中身は後でじっくりご覧いただくとして、年金制度が2022年度から大きく変わる。昨年に法改正された主要施策の施行が「22年4月」に集中しているのだ。

 今回の改正の特徴は“長く働く”時代に対応した点にある。しかし、制度が変わったからといって、誰もが対象になると思っていると、それは間違いのもと。「生年月日」によって適用されるかどうか、分かれる制度があるからだ。

■在職老齢年金の基準額を大幅引き上げ

 その筆頭に挙げられるのが、「在職老齢年金」だろう。会社で働きながら年金をもらう人の給料と年金を調整する制度。一定額以上の給料をもらうと年金はカットされていくが、60代前半でカットされ始める基準額が変わる。現行の「28万円」から、「47万円」へと大幅に引き上げられるのだ。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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