過去2番目の規模にふくらんだ21年度は、他と同様に、予算の増額分と税収の落ち込みを都債の発行や財政調整基金の取り崩しで補う。これまで抑えてきた都債を20年度比2.8倍となる5900億円近く発行。財政調整基金も、22年3月末までにさらに439億円取り崩す方針だ。

「税収がこれだけ大きく落ち込むケースはめったにない。新年度以降も先行きは読みにくく、今は目の前の対応に精いっぱいの状況」(都の担当者)

 一部では、都が「交付団体」に転落する可能性も取りざたされている。前出の佐々木氏は次のように解説する。

「景気の落ち込みが今後3~5年以上続き、都が頼りにする法人事業税が毎年1兆~1.5兆円規模で減るような状況となるなら、交付団体への転落の可能性もゼロとはいえません。しかし、都が交付団体に転落すれば、都道府県で不交付団体は一つもなくなり、不交付団体があることを前提とした現行制度自体が破綻(はたん)しかねない。実際には転落する可能性は低いとみています」

 都道府県の財政悪化は、それぞれの市区町村の政策も揺るがす。そうなれば、身近な行政サービスの低下などを招きかねないのだ。

「今後は地方圏だけでなく、大都市圏の都道府県の財政危機が表面化してくる可能性もあります。国の財政も新型コロナで打撃を受けており、地方を十分に支えられなくなっていくと、より厳しい状況に追い込まれるでしょう」(佐々木氏)

(本誌・池田正史)

週刊朝日  2021年3月19日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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