草刈民代さん
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 現在は、ミュージカル「The PROM」の稽古の真っ最中の草刈民代さん。歌う筋肉も踊る筋肉も演じる筋肉も──。人生で最も多忙な日々を送りながら、あらゆる筋肉をしなやかに保つ。

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>>【前編/草刈民代「俄然お芝居が面白くなった」 きっかけは40代後半での学び】より続く

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 肉体とその機能をとことんまで磨き抜くという意味で、バレエは、特にストイックな芸術表現である。草刈さんの話を聞いていると、子供の頃から30年以上、バレエ一筋で歩んできた草刈さんの向学心、向上心は並ではないことがわかる。

 昨年5月には、緊急事態宣言下で外出できない日々が続く中、「このままでは、社会から身体性が失われてしまうかもしれない」と危機感を覚え、親交のあるダンサー7人に声をかけ、音楽に合わせてそれぞれが自宅で踊っている場面を繋いでいく5分間のダンス動画をつくった。

「その動画がきっかけになって、今年の1月30日には、私が引退公演をしたオーチャードホールで、ジャンルを超えてダンサーたちが競演する舞台を制作することになりました。私が芸術監督を務めたのですが、ここ12年間の女優としての経験が役立っていることを感じました。以前よりも大きな視点で、表現することを捉えているような実感があって。ダンサーたちの表現をさらに実のあるものにするための助言も、以前より的確になっていたのかもしれません」

 その公演では自分も踊ることになった。半年前から、2021年の春に上演されるミュージカル「The PROM」の歌のレッスンも始めていて、歌うための身体づくりをしていたのが、ダンス公演のためには短期間でダンサーの体に戻さねばならない。そこには、とてつもない困難が待っていた。

「踊りと歌って、体の使い方としては対極なんです。呼吸の仕方も全然違うし。私は、お芝居用の大きな声が出せるようになるまで10年近くかかっています。実は呼吸を変えるというのは簡単にできることではありません。せっかく歌のレッスンをしていても、それを中断してダンスのスイッチを入れると、それまでの蓄積が無駄になってしまう。踊りのほうも、舞台で踊るとなったら生半可なことはできませんし。私はきっちり稽古の予定を立てて作品に取り組むほうなのですが、今回は身体の疲れもあってか、まったく想定通りにはいかず、こんなに追い詰められたのも久しぶりでした」

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