そこから潮目が変わり、踊りで培ったものと演劇がつながるようになってきた。

 女優としての経験を積む中で、「自分に欠けているのは何なのか」に気づいた上で、芝居のメソッドを学んだとき、「ああ、だからか!」といろんな疑問が氷解したという。

「そこから、俄然お芝居が面白くなりました。一昨年は、バーター先生に私がプロデュースする2人芝居の演出をお願いしたんですが、そのときは、先生と一緒に戯曲探しから始めました。選んだのが日本初上演の作品だったので、夫(映画監督の周防正行氏)にも台本づくりに関わってもらって。演劇作品で、ゼロからの舞台づくりができたことで、演じることへの理解も深まったし、女優としての自分を少し信頼できるようになりました」

(菊地陽子 構成/長沢明)

草刈民代(くさかり・たみよ)/1965年生まれ。東京都出身。87年全国舞踊コンクールバレエ第一部第1位、文部大臣奨励賞を始め、数多くの賞を受賞。96年の映画「Shall we ダンス?」(周防正行監督)に主演し、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。バレエを引退後は女優に軸足を置きつつ、国内外の公演でアーティスト、プロデューサーとしても活躍。4月からドラマ「イチケイのカラス」に出演。

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週刊朝日  2021年3月19日号より抜粋