低酸素状態が進んで呼吸が止まった可能性も否定できないという。

 ノルウェーでは1月26日時点で、接種後に高齢者33人の死亡例があった。多くは重篤な疾患があったとされている。同国政府は「ワクチン接種と死因との関連性は確認されなかった」としたが、楽観は禁物だ。

 現在、日本で先行接種されているのが、ファイザー製のワクチンだ。この後、モデルナ、アストラゼネカのワクチンも使われる予定だ。ファイザーやモデルナが開発したワクチンは、m(メッセンジャー)RNAと呼ばれる。

 浜医師は、臨床試験の結果から、ワクチンを接種したグループに発熱や痛みなど重い有害事象がどれくらい起きているか、非接種のグループと比較した。ファイザーは1.7倍、モデルナは2.5倍あった。特に気になるのは、有害事象の国際分類でグレード4の「命が脅かされる重症例」とされるケースだ。モデルナで40度以上の発熱が13人、激しい嘔吐(おうと)が1人に生じた。治験ではおおよそ1千人に1人の割合になる。

 アストラゼネカのウイルスベクターワクチンについては、治験で解熱剤を1日4グラム内服することになっていたが、それでも40%の人に頭痛が起きた。また、被験者に脊髄(せきずい)が炎症する「横断性脊髄炎」が2件起きて、治験を中断したことがあった。

 最終的に原因は多発性硬化症と診断され、ワクチンとの関連性はないとして治験は再開された。だが、浜医師はこう言う。

「多発性硬化症の病変は出たり治まったりするのが特徴です。それまで静まっていた症状がワクチンを打ったことによって再発したと捉えるべきです。この病気の自然発症の罹患(りかん)率は年間10万人当たり2~12人です。アストラゼネカのワクチン接種群の約6千人は追跡期間が短いため、年間人数に換算すると1280人。そのうち2人に起きたから、自然発症の10~80倍と高頻度です」

 今年2月3日までの累計感染者・死亡者数の年齢別データをもとに、年間にこれまでの2倍死亡すると仮定して、有効率95%のワクチンで、1人の死亡者を減らすのに何人に接種が必要かを年代ごとに計算した。

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