システム障害を受け謝罪するみずほ銀行の藤原弘治頭取(右) (c)朝日新聞社
システム障害を受け謝罪するみずほ銀行の藤原弘治頭取(右) (c)朝日新聞社

 休日にATM(現金自動出入機)で現金引き出しのため通帳やキャッシュカードを入れたが戻らず、銀行に電話もつながらない。その場を離れることもできず、何時間も待たされたら──。

 そんな悪夢が現実に起こった。みずほ銀行のATMで2月28日の午前11時ごろから大規模な障害が発生。全国5395台のATMのうち最大約8割の4318台が停止し、通帳やカードが戻らなくなった事例が5244件もあった。1日以上を経た翌3月1日の午後3時までに復旧した。

「先が見えず待つのはいや。被害を受けた顧客にとっては嫌な一日だったでしょう。自分の通帳やカードが残っていると後で申し出るのも面倒です」

 こう話すのは金融コンサルタントの高橋克英マリブジャパン代表。「みずほ銀では顧客離反が加速する」とみている。

 障害はデジタル口座への移行作業中に発生し、月末だったこともあり、システム負荷が大きくなったことが原因と関係しているようだ。藤原弘治頭取は1日の会見で「事前の見積もりが甘かった」と陳謝した。

 みずほ銀をめぐる大規模システム障害は2002年4月の3行統合による発足時と11年3月の東日本大震災直後の2度あった。その後は巨額を投じ基幹システムを刷新、19年夏に稼働を開始していた。藤原頭取は「システム運用上の問題がまだ残っていたということ。もう一度総点検し再発防止に努めたい」という。

 50代の大手行OBはこんな見方をする。

「銀行は年功序列で、役員の多くは50、60代。システム部門の役員以外、まともにシステムを理解している人などいないのでは。彼らにとってシステム化とはすなわち、省力化、人減らしによる経費削減のこと。安全性などは問題が起きた時のコストとして、数値で提示できないと納得しないのが本当のところでは」

 繰り返される大規模障害で、利用者の信頼は失われていく。利用者軽視の姿勢があるのではとみるのは前出の高橋氏だ。みずほ銀は経営効率化のため店舗のリストラを進め、1月18日から新規口座の通帳発行に税込み1100円の徴収を開始。「利用者には不便になるばかり。金融庁の監督責任が問われる」(高橋氏)

(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年3月19日号