田所食品の田所大樹代表が、当時のことを思い出して語る。

「ブドウ畑は海から300メートルのところでしたから、本当に壊滅状態。一本一本手作業で植え直すところから始めました。また山元町は東北最大のイチゴ生産地でしたが、畑の95%が流されてしまったんです。生産者のためになればと、イチゴジュース作りにも取り組みだしています」

 東西に広い福島県は、浜通りと呼ばれる沿岸部と内陸の会津では、食文化に違いがある。

「タウンマガジンいわき」(いわき市)の小野勝礼さんが、沿岸部の漁業や加工業者を応援する。

「もともとこのあたりの魚介類は『常磐もの』と呼ばれて、評価の高いブランドものでした。ただし原発事故のため風評被害が起きました。皆、大変な思いをしながら、ブランドの価値を取り戻そうと頑張っています」

 ムラサキウニをホッキガイの貝殻にのせて蒸し焼きにするウニ貝焼き、漁師料理のひとつでサンマのハンバーグというべきポーポー焼きなどの名物郷土料理がある。

 海産物を扱う丸市屋の志賀理泰社長が言う。

「ウニ貝焼きも通販で扱っていますが、それを缶詰にした商品も開発し、こちらも人気があります」

 会津若松市にある「会津嶺」編集部の新城伸子さんは、同地の風習にも触れながら魅力を訴える。

「今年は丑年ということもあって会津の赤べこが注目されていますが、こちらには会津天神という張り子の民芸品もあります。会津では3月3日の桃の節句に、男の子のいる家庭では会津天神を飾る風習があります」

 と、その名を冠した菓子「会津の天神さま」(太郎庵)を推す。

 そのうえで、

「会津は米どころであり、果物の宝庫です。コロナ禍が終息したときには、ぜひ来ていただいて、新鮮なものを召し上がっていただきたいです」

 その日が来るまで、取り寄せで生産者の想いに寄り添いたい。(本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2021年3月19日号