4月13日、空港再開の日。よくご利用いただくお客さまとお会いして、お互いの無事が嬉しくて涙を流しながら「良かったねえ」と言葉を交わしました。グランドスタッフとしては、感情を強く出すのはいけないのかもしれませんけど。

 自分自身も大変な中で、人のために動く方々をたくさん見ました。あのような災害は二度と経験したくありませんが、人を思いやる気持ちの大切さを知り、自分もそういう行動ができるようになりたいと思うきっかけになりました。唯一良かったことだと思います。

 羽田空港の拡張に伴って、13年に私を含め6人が仙台から羽田に移りました。現在は私ともうひとりが羽田に残っていて、何回か震災の経験を語る機会を作ってもらっています。

 今ではグランドスタッフとしての職務はほとんどすべて網羅。指導育成する立場になりました。パニックになったときに声をかけてくれた先輩と同じくらいの年齢です。あの先輩のように、何かあったときに後輩たちにちゃんと声をかけてあげられるかな、と自問しながら日々過ごしています。(本誌・菊地武顕)

※週刊朝日3月19日号に加筆