松重豊 (撮影/写真部・小黒冴夏)
松重豊 (撮影/写真部・小黒冴夏)
松重豊さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)
松重豊さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)

 人気ドラマ孤独のグルメ」を始め、数々の映画やドラマ、舞台で知られる松重豊さん。昨年は短編小説とエッセーが収録された『空洞のなかみ』を刊行と、活躍の幅を広げる松重さんが作家・林真理子さんと対談。いろいろな話を伺いました。

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林:やっぱりお背が高いですね。今日は松重さんにお会いするので、めずらしくヒールの高い靴をはいてきました(笑)。コロナで大変な状況ですが、お仕事はいかがですか。

松重:おかげさまで今は何とか通常どおりの撮影の形に戻ってますけど、いつ中止になるかわからない状態でやってますね。

林:それは大変ですね。舞台もかなり影響が出てきているみたいですね。

松重:僕は去年と今年は舞台が入ってないので、個人的には影響はなかったんですが、同業者の話を聞くと、ちょっと耐えられないぐらいの状況ですね。

林:初日に向けてテンションを高めて高めて、初日の2日前ぐらいに中止って言われたら、どんなにつらいだろうかと思いますよ。

松重:本当にそう思います。僕は、テレビとか映像をやる前から劇場で育ってきたんで、劇場がよりどころですからね。そこがいま機能していない状態で、これが続くと、今後の日本の演劇界、俳優さん、作家さん、劇作家さん、シナリオライターが育つ土壌がなくなって枯れちゃうんで、恐ろしいです。

林:ほんとそうですよね。

松重:ヨーロッパは出演料の8割を補償してるんですけど、日本の演劇人は声を上げづらい状況になっているのが悲しいです。声を上げてもたたかれるだけなんで。

林:私の仕事もそうですが、「おまえら、好きなことやってるんじゃないか」というのが根本にあるんですよね。自由業に対して非常に冷たいですよ、この国は。

松重:「アリとキリギリス」の話にしても、「おまえら、夏のあいだ歌ってるからダメなんだよ」が日本の解釈ですけど、「それぞれが助け合って生きていく」という話でもあるんですよね。そういう国にはまだなってないと思います。

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