ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
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 菅義偉首相の長男が務める会社から総務省幹部が度重なる接待を受けていたとされる問題。なぜ、断れなかったのか。ジャーナリストの田原総一朗氏はあきれている。

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 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による、総務省幹部たちに対する接待会食問題が、国会でもマスメディアでも重大な問題となっている。

 総務省は2月22日に、すでに判明している幹部4人に加え、職員8人も接待を受けていたと公表した。さらに、3月1日に内閣広報官を辞職した山田真貴子氏も総務審議官時代に接待を受けていたことが明らかになった。

 総務省の幹部ら13人の接待回数は、2016年7月から昨年12月にかけて、何と39回にも上る。放送事業の許認可権を持つ総務省に対して、東北新社側があきれるほどの接待攻勢をかけていたわけだ。

 22日に、立憲民主党の辻元清美氏は記者団に、「東北新社からの接待が常態化していたんだなと驚いた。半分以上、首相の息子が同席し、深く関わっていたことは見過ごせない」と強調し、共産党の小池晃書記局長も記者会見で、「ずぶずぶの関係にあったことを示すものだ」と指摘した。

 東京新聞は23日の朝刊で、「全容解明には関係者が事実を話すのが不可欠だが、国会で官僚の『虚偽答弁』疑惑が浮上。森友、加計学園問題に続き、桜を見る会の問題でも答弁の信ぴょう性が問われたばかりで、相次ぐ国会軽視の姿勢に識者は警鐘を鳴らす」として、北海道大の高見勝利名誉教授(憲法)の発言を紹介している。

「憲法上、国会には政府の行政活動を監視、統制する役割があり『虚偽答弁』はこれをこけにしている。国会の権威に泥を塗り、主権者たる国民を侮辱する行為」「日本の議会制度が正念場を迎えている」

 総務省は24日に、人事院の国家公務員倫理審査会の承認を踏まえて、幹部、職員たち11人を減給などの処分とした。そして、山田氏は、月給の10分の6を自主返納すると表明した。

 武田良太総務相は国会の予算委員会で、「行政がゆがめられたという事実はまったくない」と強調し、24日の記者会見では、「再発防止に全力で取り組む」とし、接待による放送行政への影響を調べる検証委員会を設置する方針を明らかにした。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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