渥美さんともすごく仲良くしていて、私は渥美さんのことを「兄ちゃん」って呼んで、渥美さんは私のことをどういうわけか「お嬢さん」と呼んで。しょっちゅう2人で映画や食事に出かけていました。寅さんの新作ができあがると、いつも渥美さんと一緒に映画館に見に行って。渥美さんは、私がどういうところで笑うのか、きっと知りたかったんでしょうね。山田洋次監督も、「男はつらいよ」最後のマドンナは私にしようと思ってらしたとかって聞きました。

(渥美さんが黒柳さんに心を寄せていたのでは?)

 もしかするとそうかもしれません。今思うと、ね。だけど渥美さんにとって、私の第一印象はさんざんだったのよ。初めて共演したとき、本番前なのに私はなぜか台本を持ってなくて、渥美さんが読んでいた台本を「貸して!」ってふんだくって、自分のところを読んで、本番直前にそのまま返したみたいなの。それで渥美さんは自分のセリフがあるページがどこだかわかんなくなっちゃって困ったそうなのね。「お嬢さん、あなたはね、そういう人でしたよ」って。「うそ、私そんなことしないわよ」って言ったんだけど、したに違いないと思うのね(笑)。でも今、渥美さんの奥さまととても仲良くなって、一緒にご飯食べに行ったりしてます。

(赤塚不二夫さんも黒柳さんに心を寄せていたようなエピソードがあります)

 私が鈍感で気がつかなかったんです。大阪で芝居をやったときに、突然楽屋に赤塚さんが現れて、「どうしたの?」と聞いたら、「来ちゃった」って。そこで「何しに来たの?」とでも聞いたら違った展開になっていたかもしれないけど、私は「それで、いつ帰るの?」って聞いちゃって(笑)。でも最後まで仲良くして、お互いに笑わせることができたから良かったと思います。

 私は、仕事があるから恋愛や結婚をやめたということはないんです。むしろ恋愛優先と思っていました。結婚を申し込まれたことも、お見合いをしたこともありますけど、結婚とは縁がなく現在まで来ちゃいましたね。

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