こう話すのは、生活習慣病の変遷に詳しい草津総合病院病院長で糖尿病専門医の柏木厚典さん。

 このころは、健康法も欧米化。「V字型の男性美」と紹介しているのが、ボディービルブーム(55年)。当時バーベルは1300~1700円、ダンベル(20キロ)は4千円。週刊朝日は30円なので、かなりのお値段だ。

 ちなみに筋肉を付けるだけではダメで、柔軟性も必要とのこと。「田植えをする場合に、腰が十分に曲がらなければ、ちっとも能率は上がらない」からだ。

 そこから少し後になるが、72年のエアロビクスブームもアメリカからの輸入だ。「酸素の摂取量が毎分35ミリリットルを超える運動を1週間で6日間、一定時間続けると、脂肪が燃焼して筋肉が締まってくる」と紹介。これだけの酸素を摂取するには、1回15分の縄跳びを週に5日続けることに加え、ゴルフをワンラウンド、通勤時に心拍数が上がるほどの早歩きで歩く必要があるとしている。遊び半分ではこなせない。

 鍛える系の健康ものがブームになる一方で、深刻化していったのは肥満。60年ごろから脂肪摂取量がグンと増え、ぜい肉を蓄える日本人が続出した。

「日本人の総摂取エネルギー量は昔と今とであまり変わっていません。変わったのはその内容です。穀物が減って、脂肪と単純糖質が増えています。糖尿病の患者さんも、50年代は肥満の人は少なかったのですが、90年代以降は4割以上に増えています」(柏木さん)

 単純糖質とは、砂糖や果糖を用いたソフトドリンクなどのことをいう。

 記事もこのころから、高血圧や糖尿病、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中など生活習慣病や脂質の問題を扱うもの(「『過酸化脂質』─この中年デブ殺し真犯人の正体」「四人に一人は発病の素質 急増した糖尿病をどう防ぐか」など)が目立ってくる。

 こうした成人病やがんの予防として、みそ汁を推す。今も昔も体にいいものは変わらないということか。記事では「具材を多くすると栄養が増え、具が増えるぶん汁が少なくてすむ」とし、大豆製品は海外で注目されていることにも触れている。

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