上野:東大に行くともっと幸せになれるけど、そのためのコスパが悪すぎるということ? それとも得られる幸せが減るという感じ?

神谷:そこまで無理してまで、別にわざわざ東大に行かなくても……という感じですかね。

上野:周りがめざしているから疑問を抱かずに進学してきたという進学校の女子も多いです。

山口:私は共学校出身で、みんな東大をめざしていたのでめざした。ここでは男女の差を感じたことはなかったですね。

上野:教師は進学実績に性別は問わないから。

神谷:諦めさせるような現状はあるように思います。浪人するとき、親から「女の子なのに」と言われて。東大にも反対されて。逆にそういうことを言われると燃えるタイプなので、私は絶対に合格してやると思えましたけど。

上野:いろんなところで女の子だから無理しなくていい、頑張らなくていいと言われるのよね。神谷さん、ごきょうだいは?

神谷:4姉妹です。

上野:娘だけなのは東大をめざせた理由の一つだと思う。男女の進学率の差の決定的な要因は、親にとって投資効率が良いか悪いか。息子と娘とでは教育投資に差がある。だから、東大男子には一人でここに来られたと思うなよと言うんです。親はお金とエネルギーをあなたに投資した、それは回収を予期したお金だと(笑)。男の子たちは真っ青になる。

山口:女子を増やす方法について、東大はどう考えているんですかね。

上野:以前、一番女子が少ない工学部に女子枠をつくろうってプランが出たの。そしたら工学部女子が反対した。なんでだと思う?

山口:気持ちはわかる。自分の能力が純粋に評価されず、「女だから持ち上げられた」というレッテルが付きまとうのは絶対嫌だ。

神谷:私も下駄(げた)を履かされたと見られるのはつらいですね。

上野:まさにそのとおりの理由ね。でも長い間男子が上げ底だったんだから、たまに女が下駄を履かされて何の問題があるの、と言いたいけど。人間の勝負は入試で決まらないから、むしろ入学してから伸びしろがあればいい。そういう開き直りがどうして女子にできないんだろう。

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