左から、東大本郷キャンパスの安田講堂、京大の時計台 (c)朝日新聞社
左から、東大本郷キャンパスの安田講堂、京大の時計台 (c)朝日新聞社
難関国立10大学 学校推薦型選抜・総合型選抜の結果 (週刊朝日2021年3月5日号より)
難関国立10大学 学校推薦型選抜・総合型選抜の結果 (週刊朝日2021年3月5日号より)

 難関国立大の学校推薦型選抜・総合型選抜(昨年まで推薦・AO入試)の結果が出た。合格者が大きく増えた大学がある一方で、募集の半分しか取れない大学も。今年の結果を検証する。

【一覧表】難関国立10大学 学校推薦型選抜・総合型選抜の結果はこちら

*  *  *

「一緒に準備をして苦労を知っているので、合格してくれてうれしい」

 麻布高(東京)3学年主任の天野崇さんは言う。東大の学校推薦型選抜で、3人が合格した。
 東大は今年度から出願要件を緩和。これまで1校あたり男女1人ずつ最大2人しか推薦ができなかった。麻布は男子校なので1人だけ。しかし、今年は男女各3人まで最大4人になった。

 麻布は枠を全て使い、文学部、法学部、工学部に合格者を出した。進路指導部主任の紀伊雄太さんはこう話す。

「本校では学業以外の取り組みを一生懸命する生徒が多い。推薦人数が1人だと選定が難しいときもあった。より多くの生徒が評価されて良かった」

 合格発表後の記者会見で、東大の武田洋幸副学長は「非常に成功した」と顔をほころばせた。募集100人に対し、合格者は毎年60、70人台にとどまっていた。しかし、今年は志願者が増加、92人が合格した。

 東大は今後、200人、300人と合格者を増やしたい意向だ。進学塾・Z会エデュースの高畠尚弘代表取締役社長が指摘する。

「個別科目では東大の学力レベルに達していなくても、とがった能力があると合格している。学校の現場ではそういった現状がわからず、推薦に躊躇(ちゅうちょ)しているところがある。どういう生徒が合格するのか、東大はもっと伝える必要がある」

 他の難関国立大でも、推薦・総合型選抜で積極的に学生を取る姿勢がうかがえる。九州大では合格者が67人も増加。東北大、大阪大でも50人以上、京都大、神戸大でも10人以上増えた。

 反対に、北海道大、一橋大は募集人数の半分程度しか合格者を出していない。推薦・総合型選抜の対策を専門にする洋々の清水信朗代表は言う。

「一般選抜が与えられた課題の処理能力を問われる一方で、推薦・総合型では自分で課題を見つけ解決する力が問われる。いま社会で求められているのは後者の人材。各大学で取り組みに差が出ており、今後、学生の質にも差が出てくると思う」

(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2021年3月5日号