新会長就任にあたって五輪相の辞職願を菅義偉首相に提出した後、報道陣に囲まれる橋本聖子氏 (c)朝日新聞社
新会長就任にあたって五輪相の辞職願を菅義偉首相に提出した後、報道陣に囲まれる橋本聖子氏 (c)朝日新聞社

 女性蔑視発言で辞任した森喜朗氏に代わり、2月18日、橋本聖子氏が東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長に就任した。夏冬合わせて7回の五輪に出場した経歴を持つ橋本氏はどんな人物なのか。

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「橋本氏は名前が人生を導くという考えで、3人の子どもを『せいか』『亘利翔(ギリシャ)』『朱李埜(トリノ)』と名付けるほどの五輪の申し子。『政治の師』と尊敬する森氏と近く、2030年に招致を狙う札幌五輪までには、森氏の威光を背景に北海道知事選に出馬するのではとの観測もあります」(あるスポーツ記者)

 思わぬ展開からの会長就任で、橋本氏の7年前の「黒歴史」も蒸し返されてしまった。

 14年8月、同年2月にあったソチ冬季五輪閉会式後の選手村でのパーティー中、選手団団長の橋本氏がフィギュアスケートの高橋大輔選手に抱きつき、無理やりキスをしたと報じられたのだ。当時、橋本氏は謝罪したが、「セクハラ」は否定した。

 橋本氏は18日の会見でこの件について問われると、「私自身の軽率な行動について深く反省しております」などと弁明に追われた。新会長の候補者検討委員会座長を務めた御手洗冨士夫氏は、会見で次のようにかばった。

「橋本氏は現在、国務大臣をやっている。社会的には橋本さんの謝罪を受け入れて問題にしなかったと解釈しています」

 騒動はさらに飛び火。自民党の竹下亘・元総務会長が橋本氏について「スケート界では男みたいな性格でハグなんて当たり前の世界」などと発言し批判された。元東京都職員で五輪招致に関わった鈴木知幸氏(国士舘大学客員教授)が語る。

「大臣になっても過去は帳消しにならないし、竹下氏の発言は論外。『あれはやはりまずかった』と突き放して語るべきでした。森氏の時と同じで、身内をかばうことで社会の疑念を深めかねない」

 橋本氏の過去の問題は英ガーディアンなど海外メディアも報じた。鈴木氏はこう続ける。

「橋本氏も海外で報道されるのは承知の上で会長に就任したのでしょうし、7年前の件だけで会長不適格ということにはならないと思います。ただし、森前会長の時に途中で手のひらを返したことでわかるように、IOC(国際オリンピック委員会)は海外メディアの報道と大手スポンサーの批判に弱い。今後の言動などで火種を再燃させないよう、十分注意する必要がある」

 米バイデン大統領は東京五輪参加について「開催を願っているが、まだわからない」などと発言している。新会長の行く手には、早くも難題が山積している。(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2021年3月5日号より抜粋

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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