調査を命じた野上農水相(C)朝日新聞社
調査を命じた野上農水相(C)朝日新聞社

 日本中央競馬会(JRA)のトレーニングセンターで働く調教助手や厩務員らが、新型コロナウイルスの支援策である、持続化給付金を不正受給した疑いが浮上している。

 国会で疑惑を問われたJRAを所管する野上浩太郎農相は、「農水省に調査するように指示をした」と述べている。

 コロナ対策で実施された持続化給付金。前年比で定められた以上の割合で収入が減っている個人事業主は100万円、法人は200万円が支払われる。

 調教助手や厩務員は、調教師のもとで馬の調教や世話を手がけて給料が支払われる。そして、担当する競走馬がレースに出走する時の賞金や手当の一部も収入となる。

 昨年はコロナ禍で、JRAは無観客のレースが続いた。だが、レース数は過去最高の数だった。持続化給付金の要件にある、収入の減少が規定に
達していないにもかかわらず、受給していたことが問題視されている。

 本誌は持続化給付金をもらったという調教助手のAさんに話を聞いた。

「持続化給付金がもらえると聞いたのは昨年夏くらいだったかな。まわりの調教助手、厩務員も申請して受給したと聞き、教えてもらった」

 調教助手、厩務員は馬の成績によって年収はかわる。だが、調教師から支払われる給料は、大きく変わることがないという。

「持続化給付金がどんなものだか、よく理解していなかった。コロナで収入が大きく減ったことは自分はなかった。だが、先に申請した人が『専門の税理士さんが入るから大丈夫だ』と話していた。その税理士事務所のホームページを見て、これならと信用した」(Aさん)

 Aさんが任せたのは、大阪に事務所がある税理士法人だった。そこには、競馬関係者の税務申告のアドバイスをしている内容が記されていた。
それ以上にAさんが信じたのは、税理士法人のトップを務める人物の名前だ。

「そのトップは、JRAでは名前がよく知られる馬主さんでもあります。所有馬がG1、クラシックレースを勝利したこともある。そのトップの先生の事務所が申請してくれるのなら、心配ないと思いました。他の調教助手や厩務員も、先生の事務所だから問題ないと思ったと言っています」
馬主でもある、税理士法人事務所が「指南役」だったという。

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競走馬30頭を所有する税理士事務所の正体