流行りは追わず(タイムレス)、自分のやり方で(オリジナリティ)、革命を起こす(レボリューション)手法で他者としのぎを削り、「今日と明日しかない。その中でベストを尽くす。それくらいのレングスでしか自分を見つめられない。将来なんてわからない」と石岡は言った。そして、「なんとか生き延びてきた。時代は決して一つのところに止まってはくれないから」と病と闘いならミュージカル『スパイダーマン』、映画『インモータルズ』『白雪姫と鏡の女王』の仕事を続けた。

 東京藝大を卒業後、資生堂に入社したのが1961年。67年の世界放浪でヒッピー文化を知り、資生堂を退社、「反戦と解放」がテーマのポスター『POWER NOW』を作り、69年日本初演のロックミュージカル『ヘアー』を手がける。

 石岡の生きた激動の時代と、過多な情報で全ての価値観がフラット化した現在。この両極を結びつけるかのような石岡展同時開催は一体何を呼びかけているのだろう。

 現代美術館からの帰路、留守電に気づいた。「ギンザ・グラフィック・ギャラリーの芳名帳に延江君の名前を見つけてね。懐かしくて」。音楽プロデューサー立川直樹さんの声だった。

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

週刊朝日  2021年2月26日号

著者プロフィールを見る
延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

延江浩の記事一覧はこちら