※写真はイメージです (GettyImages)
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(週刊朝日2021年2月26日号より)
(週刊朝日2021年2月26日号より)

 日本で「富裕層」が増え続けているという。アベノミクスで超金融緩和政策が進み、余剰資金が株式市場などに流れ込んで資産価値が高まったためだ。こうした資産の運用や相続対策で、大手金融機関がサービスを広げつつある。

【グラフ】日本で富裕層が増加! 2019年の純金融資産保有世帯数はこちら

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 日本における富裕層は2019年、133万世帯にのぼり、10年間で57%もふくらんだ──。野村総合研究所が隔年で実施している調査の推計で明らかになった。

 ここでの富裕層はあくまで、預貯金と株式・債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの保有金融資産合計から負債を引いた純金融資産が1億円以上の世帯。このうち、純金融資産が5億円以上の8万7千世帯が“超富裕層”で、こちらも増え続けている。

 メガバンクなどが、こうした富裕層の資産を管理・運用したり、相続相談に応じたりするサービスに力を入れている。

 三菱UFJ銀行は、富裕層向けビジネスを「ウェルスマネジメント戦略」として中期経営計画の一つに据える。なかでも資産規模20億円以上のオーナー経営者には専従スタッフをつけて、遺言信託や不動産売却などに機敏に対応している。20億円未満であっても地主や医者にも同様のサービスを展開。専従となった銀行員が窓口役を担い、案件に応じてグループ傘下の証券会社や信託銀行、不動産会社などへ紹介できるのも強みだ。

 富裕層に対応する百数十人の部隊は、顧客開拓にも余念がない。預金の多い人はもちろん、企業決算などから富裕層を見つけ出しては、“飛び込み営業”を繰り返している。すでに他の金融機関や税理士が担当しているケースもよくあるというが、「『いろいろなところと比較してみませんか』『資産運用のセカンドオピニオンはいかがですか』などと話しかけている」(三菱UFJ関係者)と足で稼ぐ努力を続けている。

 三井住友銀行も、推定保有資産20億円以上の大口富裕層への対応を進める。三菱UFJと同様、グループ企業との連携を背景にして、銀行員が富裕層の“御用聞き”に徹する。“コンシェルジュ”みたいとも言えなくはない。富裕層からの要望には、スピード感のある対応が重視されるという。

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