あ、写真といえば、この週刊朝日の表紙にも、今週、私は出る筈(はず)です。似ても似つかぬ美人に写っていますように!

 百近い年齢にもなって、何をアホなことを言ってる?とヨコオさんが苦笑いしている顔が見えてきました。

 ヨコオさんは、生まれつきハンサムでいいわね。ヘアスタイルなんか、しょっちゅう変えているけれど、どんなスタイルもよく似合っています。着るものにも神経を使って、御夫妻揃って、三宅一生の服をとても上手に着こなしていらっしゃる。

 ヨコオさんに、いつ、どこで会ってもいい加減な身なりをしていたのを見たことがありません。ヨコオさんは、すっかり忘れているだろうけれど、はじめて朝日新聞社の編集室の片隅で偶然出逢(であ)った時、あなたはその頃まだはやりにもなってなかったジーンズをはいていました。なぜ私がそんなことをはっきり覚えているかというと、それをはいた美少年が、ジーンズをとめる革のバンドの替わりに、女性用の帯締めのような、絹のきれいなヒモを、腰に巻き付けていたからです。

 それがあんまりしゃれていたので、改めてその人の顔をしげしげと見直し、その美少年ぶりに驚き直したことだったのです。

 たぶん、ヨコオさんは、そんなことは何も覚えていないでしょう。

 その帰りか、別の時か、二人でタクシーに乗っていた時、美少年のつもりだったヨコオさんが、すでに二児の父親だと聞いて、びっくり仰天したことは、はっきり覚えています。

 あれから半世紀も過ぎて、私は百歳に手の届くほど、あなたは八十代も半ばの世間流に言えば、よいおじいちゃんになってしまいました。

 ところが、実物の現在のヨコオさんは、とても八十すぎなんて信じられない若々しさで、世界のヨコオとしてアートの海を泳ぎまくり、活躍しています。私だって、頭を丸めたせいもあり、年より若く見え、黙っていたら、とても数え百歳の老婆なんて、誰も信じないでしょう。

 長い生涯に、逢っては別れた人の数は、数えきれないほど、その中で半世紀も続いているヨコオさんと私の仲は何という縁で結ばれているのでしょう。その答えがこの新刊に明かされている。

 売れるとイイネ!

週刊朝日  2021年2月26日号