宇崎竜童 (撮影/写真部・小黒冴夏)
宇崎竜童 (撮影/写真部・小黒冴夏)
宇崎竜童 (撮影/写真部・小黒冴夏)
宇崎竜童 (撮影/写真部・小黒冴夏)

 音楽活動だけでなく、俳優業でも存在感が際立つ宇崎竜童さん。意外にも役作りはしない派で切り替えも早いという。その理由は音楽と関係している。

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>>【前編/宇崎竜童は実は下戸 でも演技では「おいしそうに飲める」秘訣とは?】より続く

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 70年代後半、宇崎さんが本格的に俳優業に進出するきっかけを作ったのは、他でもない梶芽衣子さんだった。梶さんの自伝『真実』には、憧れの増村保造監督作品に出演できることになり、相手役に宇崎さんを推薦した経緯が綴られている。ただ、身を削るような思いで芝居をした梶さんと違い、宇崎さんはカットの声がかかるとカセットテープでロックを聴いていたそうで、その切り替えの速さにはついていけなかった、とも。

「役者さんたちは、撮影中はずっと役の中に生きて、その作品の色や空気に染まっていく。でも、俺は『カット』って言われた瞬間に、個人に戻っちゃうんです。なんでそうなるかっていうと、音楽がそうだから。例えばバンドでやってるときは、自分でカウントを出すかドラマーがカウントを出すかのどっちかなんですが、“ワンツースリー”の“ワン”が始まる前は、ただの人。まぁ、宇崎竜童っていう役柄とも言えるけど」

 カウントに入ったら、イントロが出るまでの4カウントの中で、歌の役に入るのだという。

「最近のシンガー・ソングライターは、自分のことや自分の思いを歌にしてる人が多いみたいだけど、俺はストーリーとかドラマを3分半の中にぶち込んで作ってきた人間だから。曲によって、キャラクターが少しずつ違うんです。そのキャラクターを、毎回、4カウントの中でスイッチしていく。だから、映画もドラマも『よーいスタート』って言われて初めて、そこに入っていくのが染み付いちゃってるの。入っていくための心構えや準備は、何カ月か前にもらったホン(台本)を、読んで読んで読み倒して、セリフを間違えないようにしていく。それだけ!」

 とはいえ、いわゆる“役作り”をしない理由は、監督からの演出を素直に受け止めるためでもある。

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