内情に詳しい政府関係者は、ワクチン契約をめぐる情報が行政内部でも十分に共有されていないと指摘する。

「河野氏は「『情報管理』や『機密保持』を徹底するあまり、製薬会社との交渉を担う厚労省や、輸出規制を導入したEUとの窓口になる外務省にさえ情報を伝えていない。中でもワクチンの供給契約の詳しい情報は『最高機密』で、一部の人間しか知らない。交渉にも支障が出ており、省庁間の関係もぎくしゃくしています」

 自民党新型コロナウイルスに関するワクチン対策プロジェクトチームの役員会でも「契約の詳細がわからないのでEUと交渉ができない」という外務省の不満も取り上げられた。メンバーの佐藤正久参院議員が振り返る。

「厚労省の説明では、外務省の交渉担当者とは情報を共有していると言っていましたが、一部の担当者に限られるようです。相手方(製薬会社)との関係もありますし、(情報を共有する職員は)非常に限定されているのでしょう」

 情報共有が十分でないことからくる不協和音は、いまや関係する各省庁に広がっている。

 河野氏が担当大臣となる以前、ワクチン確保を所管していたのは和泉洋人首相補佐官や、和泉氏と「コネクティングルーム不倫疑惑」が報じられたこともある厚労省の大坪寛子審議官らを中心としたチーム。コロナ対策を担当する西村康稔経済再生担当相や田村憲久厚労相も関わり、外務省や総務省の存在も大きい。

 だが、こうした厚労省を中心とした体制での契約交渉が順調だったとは言い難く、事態を打開するために河野氏が送りこまれた経緯がある。

「河野氏はこれまでワクチン確保の中心となってきた和泉氏、厚労省に代わって主導権を握り、自身に情報を一手に集めている。しかし、専門のブレーンがいないのに、外交ルートを有する外務省や製薬会社とパイプのある厚労省を遠ざけて、うまくいくのか危惧されている。いまやワクチン確保のための体制は破綻寸前の状態です」(前出の政府関係者)

 各自治体が実施するワクチン接種をとりまとめる総務省の担当者も困惑しているという。

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