「麒麟がくる」主演の長谷川博己(C)朝日新聞社
「麒麟がくる」主演の長谷川博己(C)朝日新聞社

 2月7日の放送で最終回をむかえたNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」。シリーズ開始前には、帰蝶(きちょう)役で出演予定だった沢尻エリカの逮捕により、川口春奈を代役として撮り直しするなどし、2週遅れでの波乱スタート。さらに、コロナ禍での収録一時休止も乗り越え、当初予定していた全44回をすべて放送することができた。

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 長谷川博己主演による明智光秀の生涯は、クライマックスとなる「本能寺の変」を描いた最終回の視聴率は18.4%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)という、番組2位の高視聴率を記録。平均視聴率も前作の「いだてん~東京オリムピック噺~」を大きく上回った。

「さまざまなトラブルに見舞われた中で、大善戦となったといっていいのではないでしょうか」

 と言うのは芸能評論家の三杉武さん。

「麒麟」のラストシーンでは、本能寺の変の数日後に光秀は秀吉率いる軍勢に滅ぼされたことがナレーションで語られる“ナレ死”扱いであったことや、実は生き延びたという光秀生存説を大胆に採り入れたことでも大きな話題を集めた。

 メディア文化評論家の碓井広義さんは、「麒麟がくる」で描かれた光秀像について、こう語る。

「今回の光秀は、これまで描かれてきた戦国武将像のイメージとは大きく外れていました。一言でいえば『戦の嫌いな武将』です。今回の大河のテーマであった『麒麟』とは、民の安寧な暮らしの象徴です。戦とはそれを破壊するものであって、信長の世が続くことは、光秀が目指す民の安寧=麒麟がくることにつながらなかったと推測できる作りになっていました」

 そして、明智光秀という名前そのものにも注目する。

「“武”の人でなく“智”の人である光秀。世界を広く見渡し、“明”るい“光”を注ぐことに“秀”でていると読んだ場合、理想主義かもしれませんが、“俺が俺が”で出世欲の塊だらけの中、民の安寧な暮らしを望む。そんな信念を持った人物がいたんだということを伝えたいという、まさに今の時代に通ずるドラマ。製作陣の思いも伝わった気がします」

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過去のヒットに似た「青天を衝け」への流れ