※写真はイメージです (GettyImages)
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(週刊朝日2021年2月19日号より)
(週刊朝日2021年2月19日号より)

 介護保険料の滞納により差し押さえ処分を受ける人が増えている。滞納する理由は何か、滞納した場合どのような処分を受けるのか。生活が苦しく保険料を納めることができない場合の対応とは?

【表】介護保険料の給付制限と軽減制度の利用要件 詳しくはこちら

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 長年、群馬県で生活困窮者を支援してきた司法書士の仲道宗弘さんは、「月数千円の介護保険料が払えないほど生活が苦しい高齢者は珍しくない」と話す。

「これまで相談を受けたケースでは、定年後に、パートで生活費を稼いでいたものの、父親が入所した介護施設の費用の支払いで生活が圧迫され、介護保険料を滞納してしまった方がいました。また、高齢の夫妻で自営業をしていたものの、夫が重度の糖尿病で働けなくなり、年金も2人合わせて生活保護基準以下しかなく困っているという相談もありました」

 厚生労働省が発表した「令和元年度介護保険事務調査の集計結果」によると、2018年度の介護保険料滞納による財産差し押さえ処分者数は1万9221人。この数値は、調査開始以来最多であり、滞納による処分者数は年々増加している。

 要因の一つとして考えられるのが、介護保険料の値上がりだ。介護保険制度が開始した00年度、介護保険料の全国平均月額は2911円だったが、18年度からは5869円と倍以上に上昇。一方で、老齢基礎年金(満額)の支給月額は、00年度から18年度にかけて2075円減少した。介護保険料の上昇分を加味すると、手取り収入が月約5千円減ったのと同じことになる。さらに25年度には、介護保険料が7千円前後になると推計されており、年金生活者の家計への圧迫が強まっている。

「こうした負担増は、低年金者ほど影響が大きい。生活保護を受けられればいいが、『家や車を持っていたら保護が受けられない』といった誤解も根強く、生活が苦しくても支援につながらないケースも多くある。今後も滞納者数は増加すると思う」と仲道さんは語る。

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