“親指キーボード”世代の直木賞作家が語る「レコードと青春」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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“親指キーボード”世代の直木賞作家が語る「レコードと青春」

連載「出たとこ勝負」

黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行・作家 (c)朝日新聞社

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※写真はイメージです (GettyImages)

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 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、レコードについて。

*  *  *
 パソコンのキーボードの調子がわるくなった。打ち込んだはずの文字がときどき、ちがうものになってディスプレーに出る。こいつもそろそろ寿命かと、裏のラベルを見ると2005年製だった。

 わたしは『OASYS V10』という日本語ワープロソフトで原稿を書いている。これは“親指シフト”という日本語の入力方式が使える。富士通が考案し、ワープロ専用機の普及初期において、JISかな入力より格段に速いとされたが、パソコンが普及するにつれてローマ字入力が主流になり、やがて市場から消えていった。いまどき“親指シフト”といっても、若いひとには“それなんですか”状態であり、原稿をメールで送っても、オアシス文書変換ソフトを持っていない新聞社や放送局がある。つまりはガラパゴスとなった方式なのだ。

 富士通は親指シフトから撤退し、いまは親指シフトキーボードを作っていない。わたしが使っているキーボードはたぶん、生産最終年のころのものだろう。そんなわけで、二十年ほど前からオークションで中古の親指シフトキーボードを買い集めてきた。一時は十台あまりがクロゼットにあり、それらを故障するたびに交換してきたのだが、いまや二台しか予備がない。いっそローマ字入力に変えるという考えもなくはないが、三十年も慣れ親しんできた方式を捨て去るには覚悟がいる。

 で、クロゼットから予備のキーボードを出してきた。2002年製だ。パソコンに接続し、恐る恐るキーを叩(たた)いてみると正常に作動したからほっとした(この原稿はそのキーボードで書いている)。

 これと似たようにカセットテープ、ビデオカセットがなくなった。一時はミニディスクというのがあって車にもデッキが搭載されていたが、あっというまに消えた。我が家のミニディスクデッキは電源を入れることもない。映画DVDも音楽コンテンツのCDもいずれは消える運命なのか。


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