TOKYO FMホールのステージに集まったボサノヴァ・ガールズ(撮影/写真部・張溢文)
TOKYO FMホールのステージに集まったボサノヴァ・ガールズ(撮影/写真部・張溢文)

「ボサノヴァ・ガールズ」とは村上春樹の呼びかけで結成されたバンド。メンバーの小野リサさん、大西順子さん、坂本美さん雨の3人が、コロナ禍での新しい音楽の楽しみ方を語り合った。

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坂本美雨(以下、坂本):コロナ禍の2020年、緊急事態宣言も発令され、お二人はどのように過ごしていましたか。

小野リサ(以下、小野):ライヴで旅をする生活をずっと続けてきたので、ステイホームのときはできるだけ家族といる時間をつくるようにしていましたね。

大西順子(以下、大西):私も長く旅をする暮らしをしてきて、ステイホームのときは、じっと曲作りをしようと思い、でも、だめでした。

坂本:私も曲作りをしようと思ったのですが、いつものようにはできなくて……。

大西:意図していないのに、とても暗い曲ができてしまったこともあります。思うような創作はかないませんでした。

坂本:2020年の秋あたりから、ぼちぼちライヴが始まりましたよね。

大西:私はジャズクラブで客席の間隔を確保して、少しずつやっています。

小野:コロナ禍でステージに上がれない期間を経て、久しぶりにお客様の前で演奏したときは、大変な喜びでした。それまで当たり前のように歌い、演奏してきたことが実はとても貴いことだと、今は身に沁みています。

大西:客席は飛沫防止のためにみんなマスクを着用していて、歓声を禁じられています。その代わりに、思い切り拍手してくれる。「Bravo!」と書いたプレートを私に見えるように掲げてくれる人もいます。音楽で人と人がつながっている実感があります。

坂本:MURAKAMI JAMでもそんな喜びを感じ合いたいですね。

大西:といいつつも、私、ピアノを弾き始めると演奏することに集中してしまうんですけれどね(笑)。

小野:それは私も同じかもしれない(笑)。

大西:無観客だったり、客席の間隔を空けたり、配信だったり、今はかつて経験したことのない状況で音楽をやっています。この厳しい時期を抜けたとき、新しい音楽の楽しみ方が生まれてほしい。そして、音楽そのものがもっと力を付けたら素敵だと感じています。

(構成/神舘和典)

週刊朝日  2021年2月12日号より抜粋