そしてクラシックのフィールドで村治佳織に声をかけた。

「クラシックのギタリストがボサノヴァのセッションでは、どんなアプローチをするのか、期待しています。村治さんは歌うようにメロディーを奏でる。クラシック系のギタリストには、歌うような演奏を恐れる人もいますけれど、彼女は恐れない。大西さんやリサさんとどんな演奏をするのか、想像もつきません」

 司会の坂本美雨もシンガーとして加わる。

「名盤『ゲッツ/ジルベルト』の録音から50周年の13年、日本人ミュージシャンを主に『ゲッツ/ジルベルト+50』というトリビュート盤がリリースされました。そこで美雨さんが『デサフィナード』を歌っているんです。彼女たち4人で“ボサノヴァ・ガールズ”を結成してもらいます」

 そして、スペシャル・ゲストには山下洋輔も。

「美雨さんが歌った『デサフィナード』では、洋輔さんがピアノを弾いていましてね。大西さんに話したら、“最終兵器”として洋輔さんを投入しましょう、と言いだした」

 その場で、大西は山下に電話をかけ、OKの返事をもらった。

「ボサノヴァが生まれて60年くらい経ち、今では世界共通言語のように演奏されています。ブラジルだけでなく、各国それぞれのボサノヴァがある。日本人が演奏するボサノヴァだからこその解釈や魅力もあります。今回の顔合わせは、とても新鮮。僕自身リスナーとしても楽しみです」

(聞き手/神舘和典、本誌・森下香枝)

村上春樹(むらかみ・はるき) 1949年生まれ。早稲田大学在学中にジャズバーを開く。79年、『風の歌を聴け』でデビュー。87年発表の『ノルウェイの森』は上下巻1000万部を売るベストセラーとなり、春樹ブームが起きる。海外でも人気が高く、世界中で大きな影響力をもつ作家の一人。音楽好きで翻訳本『スタン・ゲッツ 音楽を生きる』(ドナルド・L・マギン著)などがある。

週刊朝日  2021年2月12日号より抜粋