映画の現場では、若い人たちが自分たちの能力を惜しみなく費やしてものづくりに関わっているところに健気さと微笑ましさを感じた。

「『私は若いんだから老人扱いしないでね』と言うとみんな笑うの(笑)。でも、年寄りだからって丁重に扱ったりしたら承知しない。大っ嫌い、そういうの」

 誰に対しても対等でいようとする梶さんには、上下関係を重んじる日本は居心地が悪い部分もあるのかもしれない。日々のルーティーンを聞くと、意外なストレス解消法があることを教えてくれた。

「デビューしたときからずっと日記をつけているの。愚痴手帳みたいなもので、人に言えない愚痴を全部書き出すだけ。毎年、大晦日に、丹波黒豆を母の秘伝の作り方で7時間煮るんだけど、そのコトコト煮込んでいる間に、愚痴手帳を見るのが年末の一番の楽しみです(笑)」

「人に言うよりいいでしょ?」と言って笑う。その生き方が、もう十分にロックなのだった。

(菊地陽子 構成/長沢明)

梶芽衣子(かじ・めいこ)/1947年生まれ。東京都出身。高校卒業後に日活に入社。65年「悲しき別れの歌」で、太田雅子名義でデビュー。69年梶芽衣子に改名。70年に「野良ロック」シリーズに主演、「女囚さそり」シリーズ、「修羅雪姫」シリーズなどがヒット。テレビドラマ「鬼平犯科帳」シリーズではおまさ役を28年にわたり演じた。2018年アルバム「追憶」をリリース。半生を綴った『真実』(文藝春秋刊)も上梓。

週刊朝日  2021年2月12日号より抜粋