さださんが読んだという『真実』の中のエピソードでも、過去の会話が鮮明に活写されている。そこはさすが女優。読むほどに、話を聞くほどに、観察眼の鋭さに驚かされるが、聞けば最近の趣味は、電車移動の際の人間観察なんだとか。

「ずっと車移動だったせいか、電車がこんなに面白いなんて知らなかった。人間の生態を観察するのにあんなにピッタリな場所はないですね。この間は、噂には聞いていた、『電車の中でお化粧する人』に遭遇して、その人は、立ったまま、吊り革にもつかまらずに器用にお化粧していました。この服装だと、何してらっしゃる方かしらとか、いろいろ想像していると、全然退屈しないです」

(菊地陽子 構成/長沢明)

梶芽衣子(かじ・めいこ)/1947年生まれ。東京都出身。高校卒業後に日活に入社。65年「悲しき別れの歌」で、太田雅子名義でデビュー。69年梶芽衣子に改名。70年に「野良ロック」シリーズに主演、「女囚さそり」シリーズ、「修羅雪姫」シリーズなどがヒット。テレビドラマ「鬼平犯科帳」シリーズではおまさ役を28年にわたり演じた。2018年アルバム「追憶」をリリース。半生を綴った『真実』(文藝春秋刊)も上梓。

>>【後編/「年寄りだからって丁重に扱ったら承知しない」梶芽衣子の“ロック”な生き方】へ続く

週刊朝日  2021年2月12日号より抜粋