※写真はイメージです (GettyImages)
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毎月の収支改善で延びる「資産寿命」 (週刊朝日2021年2月12日号より)
毎月の収支改善で延びる「資産寿命」 (週刊朝日2021年2月12日号より)

 新型コロナウイルスの感染拡大で不便な暮らしを強いられるなか、介護費や保険などのサービスが続々値上がりする。企業は4月から、70歳まで働ける環境づくりを求められる。負担増でお金の不安は増すばかりだが、少しでも「資産寿命」を延ばし、70歳就業時代を乗り切ろう。

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 では、どのくらいの備えが必要か。『定年の教科書』(河出書房新社)などの著書があるFPの長尾義弘さんは「難しく考える必要はない」としたうえで、「まずは老後の『収入』と『支出』、『老後資金』の合計の三つを洗い出すだけでいい。大事なのは、お金の流れを“見える化”することです」

 収入が支出を上回って「黒字」なら、老後資金を取り崩す必要はないし、無理して働かなくてもいい。だが、支出のほうが多い「赤字」だと、老後資金を取り崩して赤字分を埋めなければならない。

 赤字の人は、毎月の赤字分を年額に換算し、老後資金の合計を割ると、資産がいつまで維持できるかの「資産寿命」がわかる。

 65歳まで働いて、老後資金の合計が1千万円ある夫婦2人のケースで考えてみよう。退職後の収入は2人の年金で月20万円、支出は同25万円と想定する。支出が収入を上回り、毎月5万円の赤字だ。

 65歳以降に何もしないと、毎年、老後資金を5万円×12カ月=60万円ずつ取り崩す必要がある。老後資金の1千万円をこの60万円で割ると、16.66年、つまり約17年後の82歳前後に資金が尽きる計算だ。男性の平均寿命は81.41歳で4人に1人は90歳を超える。女性の平均寿命は87.45歳で、4人に1人が94歳まで生きる。老後資金はぎりぎりか、足りない。

 そこで70歳まで働き、毎月5万円でも収入を得る。すると、70歳まで毎月の赤字は解消され、70歳以降に引退して毎月の赤字が5万円になっても、老後資金が底をつくのは87歳前後となり、5年先延ばしできる。

 資産寿命が把握できれば、漠然とした不安が取り除かれ、無理なペースで働くことも防げる。

 長く働き、年金額を増やすことも選択できる。年金の「繰り下げ受給」をすれば、1年受け取るタイミングを遅らせると年8.4%増える。70歳まで5年繰り下げれば42%の増額だ。

 65歳の受取額が月20万円、年240万円の人は、70歳までの繰り下げで月28.4万円、年340.8万円に増える。毎月の収支が5万円の赤字の人は、繰り下げ受給だけで3.4万円の黒字に転換する。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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