テレビ東京の大江麻理子アナウンサー生 (c)朝日新聞社
テレビ東京の大江麻理子アナウンサー生 (c)朝日新聞社

 テレビ東京の報道番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」が、3月29日から1時間繰り上げて夜10時の放送に移動する(金曜日は夜11時)。1月25日に行われた改編発表会見では、同社の石川一郎社長は「コロナ禍で生活様式が変わった」ことなどを理由に挙げた。

 夜10時開始といえば「報道ステーション」(テレビ朝日)と同時間帯で、視聴者争奪戦が繰り広げられることになる。芸能評論家の三杉武氏はこう話す。

「テレ朝の夜10時は『ニュースステーション』の久米宏氏、『報ステ』の古舘伊知郎氏という大物キャスターがメインを務めた時代と比べて存在感が低下しているので、テレ東の看板番組『WBS』が裏に来るのは脅威でしょう。『WBS』は経済界の大物がゲストで出演するので、視聴者が引っ張られると思います」

 コロナ禍で在宅時間が増えたことも起因し、情報番組や報道番組は視聴率の狙いどころ。そのため各局は今期の改編で勝負に出ているという。

 そんな中、「WBS」の存在感を世に知らしめる出来事があった。1月18日から、メインの大江麻理子アナらがマスクを着用したまま出演し始めたのだ。他局にはない徹底した感染対策に視聴者の反応は概ね好評のようだが、業界内では不穏な声も少なくないとか。

「感染対策強化は良いのですが、『余計なことしてくれた』『やられた』と他局のテレビ局員は嘆いています。正しいモデルとしての同調圧力につながりかねないことからです」(三杉氏)

 メディア文化評論家の碓井広義氏は、対策の「行き過ぎ」を懸念する。

アナウンサーと他の出演者の間に距離もアクリル板もある中でのマスク着用は“やっている感”の演出のようにも見えてしまいました。街を歩くときにマスクが必要なのは言うまでもありませんが、直接対面しているわけでもない視聴者に向かってまでマスク姿で語りかける必要はあるのか。家にいるときまでマスクをしないといけないような『圧』を感じてしまいました」

 感染対策にテレビはどう向き合うか、悩みどころのようだ。(本誌・岩下明日香)

週刊朝日  2021年2月12日号