「アルコールは神経毒なので、神経細胞を傷つけます。特に意欲をつかさどる前頭葉が影響を受けやすい。毎日飲んでいれば当然、神経毒にさらされる時間が長いため、脳がダメージを受けやすいのです」

 こう話すのは、精神科医で認知症に詳しいアルツクリニック東京院長の新井平伊さんだ。

 アルコールは神経伝達物質のアセチルコリンの働きを低下させ、動物実験でも記憶に関する機能を低下させている。海外の報告では、飲酒をする平均年齢60歳と、飲酒をしない60歳の脳を比べると、大量の飲酒をしていた人のほうが脳の萎縮が進んでいた。少量の飲酒でも、飲酒をしない人と比べて萎縮がみられた。

「もちろん、認知症になる手前で飲酒をやめれば、脳の機能が回復する可能性があります。実際、当院でもMCI(軽度認知障害)と診断された人が、断酒を含む生活習慣を変えると、認知症テストで改善がみられています。『記憶力がよくなった』『頭がスッキリした』と話される患者さんも少なくありません」(新井さん)

■寿命を縮める習慣(3)睡眠不足&寝すぎ

 アルツハイマー病と睡眠不足との関係は徐々に明らかになっている。アルツハイマー病の発症にはアミロイドベータという不要なたんぱくが関係しているが、これは睡眠中に代謝され、脳の外に排出される。逆に睡眠時間が短いとたまりやすいというのだ。

「実は長時間の睡眠もよくなくて、6時間半~7時間の睡眠だと最も認知症になりにくいと言われています。ただ、適正な睡眠時間には個人差がありますし、昼間の活動状態や眠りの質も睡眠時間に関係します。時間だけにこだわらなくていいと思います」(同)

 昼間眠くなる人は、15~30分ほど昼寝などをして、対応しよう。

■寿命を縮める習慣(4)自己流の歯みがき

 最後は歯周病。重度の歯周病がある人はない人に比べて1.5~2.8倍ほど脳梗塞や心筋梗塞になりやすい。年間4万人もの死亡者を出す誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクも歯周病があるほど高まる。

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