『The Shadow of Your Smile』(いそしぎ)をゆったり歌いながら、「ゆるーい波で、どんぶらこ、どんぶらこと漕いでいきます。みなさんもその波に乗っかってください」と、クボジャーの絶妙トークで会場はどこまでも気持ちよく和んでいく。
ボサノヴァ風にアレンジされた『LA・LA・LA LOVE SONG』に身をゆだね、コロナ禍の中で仕上げたという医療従事者を含むすべての人へ捧げるバラード『空の詩』に心震わせ、フリューゲルホルン奏者のTOKUも舞台に加わった『Hello Like Before』にうっとりし、『上を向いて歩こう』のカヴァー『SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~』には(コロナで大変な世の中になったけど、一緒にどこまでも前向きに歩いて行こう)というクボジャーの呼びかけを感じた。
『SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~』からアンコールまで、希代のシンガー久保田利伸が繰り出すビロードのように柔らかなグルーヴは、遥かIPANEMAのビーチに寄せては返すさざ波にも似て、目を閉じ、じっと耳を傾ければ、かつて城達也さんがパイロットを務めたFMプログラム『ジェットストリーム』のような、大人の粋、時代を超越した贅沢な一夜を提供してくれた。
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
※週刊朝日 2021年2月5日号