楽天は昨季4位とクライマックスシリーズ(CS)進出さえならなかったが、田中の加入で一気に優勝候補となる。先発ローテーションは田中、則本、移籍1年目の昨季、最多勝を獲得した涌井秀章、岸孝之の4本柱に加え、早稲田大のドラフト1位左腕・早川隆久、プロ2年目の成長株・滝中瞭太、塩見貴洋、石橋良太、弓削隼人、福井優也らがしのぎを削る。

 特にエース・則本は2年連続5勝止まりと不本意なシーズンが続いただけに、師と仰ぐ田中と再び同じユニホームを着てプレーできることは大きな発奮材料になるだろう。

 ただ、楽天が優勝を狙う上で大きなカギとなるのが捕手だ。昨年のスタメンを見ると、太田光の51試合出場が最多で、下妻貴寛が43試合、足立祐一が26試合出場と正捕手を固定できなかった。強肩が武器の太田はリーグトップの盗塁阻止率3割3分3厘をマークし、ソフトバンク・甲斐拓也の盗塁阻止率3割2分8厘を上回っただけに潜在能力は高い。だが、リード面や確実性を欠く打撃など磨かなければいけない部分は多い。

 スポーツ紙デスクは、こう分析する。

「楽天は田中が戻ってきて手ごわくなりますが、ソフトバンクのほうが総合力は上でしょう。三木肇監督(現・楽天2軍監督)が昨年の1年限りで退団し、その前年の2019年もCS進出した平石洋介監督(現・ソフトバンク1軍打撃コーチ)が1年限りでチームを去っている。3年連続で監督が代わる状況はチームの方向性が定まっていないと批判されても仕方ありません。石井GM兼監督は人脈の広さを生かして選手を獲得する能力が高いですが、現場の指揮官としての能力は未知数です。田中も米国からマウンドの土が柔らかい日本に戻り、アジャストするために時間を要すると思います。開幕から白星を積み重ねると皮算用をするのはリスクです」

 東日本大震災から10年の節目となる21年。田中の獲得に成功した「石井楽天」の運命はいかに――。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事