2013年の日本シリーズ第7戦で、最後の打者を三振に打ち取り、両手で大きくガッツポーズする楽天の田中将大(C)朝日新聞社
2013年の日本シリーズ第7戦で、最後の打者を三振に打ち取り、両手で大きくガッツポーズする楽天の田中将大(C)朝日新聞社
楽天の石井一久監督(左)(C)朝日新聞社
楽天の石井一久監督(左)(C)朝日新聞社

 今オフ一番のビッグニュースだ。楽天が、ヤンキースからフリーエージェント(FA)になっていた田中将大の獲得を1月28日に正式発表。背番号18の2年契約、年俸9億円プラス出来高の日本球界最高年俸で合意したとみられる。

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 古巣に8年ぶりの電撃復帰は1投手の補強にとどまらず、大きな影響をもたらす。則本昂大、松井裕樹ら後輩たちは田中の野球に取り組む高い志とストイックな姿勢を慕っている。その存在だけで投手陣全体の底上げにつながるだろう。

 ヤンキースとの7年契約が満了した今オフ、メジャー通算78勝(46敗)右腕の評価は決して低くなかった。だが、コロナ禍の影響で各球団の財布のひもはきつく、移籍市場は停滞。メジャーのあるスカウトは、今回の決断にこう理解を示す。

「田中は例年だったらもっと早くメジャーで所属先が決まっていただろうし、好条件の契約を勝ち取れただろう。コロナで犠牲になった選手の一人ともいえる。米国で新型コロナウイルスの感染拡大は収まっておらず、シーズン開催も数年は不透明な状況が続くだろう。高額なサラリーが望めない状況になる可能性は十分にある。それなら日本でプレーして2年後に再びメジャーでプレーするのも現実的な選択肢だと思う」

 メジャー挑戦した日本人選手が、所属していた古巣球団に戻るのは決して当たり前ではない。32歳と脂が乗り切った田中にも日本の複数球団が興味を示していたが、楽天との絆は強かった。メジャー移籍後も楽天が自主トレ用に仙台の球団施設を開放するなど交流を継続。今オフも松井らと練習を行っていた。

 交渉術にたけた石井一久ゼネラルマネジャー(GM)兼監督の手腕も光った。自身もメジャーで現役時代にプレーしていたことから、田中がメジャーでプレーしたい気持ちは十分に理解している。関係者の話によると、楽天はメジャー各球団の評価がそろうまでは条件提示せずに静観。田中の気持ちの整理がつくまで待ち続けた。日本球界復帰も選択肢として浮上したところで、オファーを出したとみられる。

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一気に優勝候補へ