入試問題の作成には、相当な時間や労力がかかる。ある有名私大では各教科に10人程度の作問担当者、さらに10人程度の校正担当者をつける。春から作問がスタートし、秋ごろに一通りの問題を作成。校正担当者が解き、修正を入れて何度も作り直す。年内には内容が固まる段取りだ。

 誤字脱字などの基本的な校正に加え、大学の教育方針に合致しているか、解答が二つにならないかなど、細かなチェックも入る。特に近年は出題ミスが大きく“炎上”する。担当者は神経をとがらせており、やりたがらない教員も多いという。

 神戸さんは指摘する。

「試験を実施するのにも、試験監督や誘導員の人件費、複数の会場費、運送費といったお金がかかる。採点や合否判定にもかなりの人手がかかる。最近は私大の入試が多様化し、そのコストも大きい。他方で、共通テストや英語民間試験を利用すれば、この手間がかなり省ける」

 18歳人口が大きく減る中で、私大の経営環境はより悪化していく。駿台教育研究所の石原賢一進学情報事業部長は言う。

「基本的な学力試験問題は、大学入試センターが準備せざるを得ない状況になるのではないか。センターには問題の蓄積があるので、大学に作問の素材を提供するというのもあり得る。こうした大学では学力試験は絶対評価で行い、さらに面接などを導入して求める人材を選抜していく方法がよいのではないか」

 入試問題が大きく変わる時代が到来しそうだ。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2021年2月5日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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