▽90代の父が30万円の手数料がかかる遺言信託の契約を結んで遺言を保管してもらっている。しかし、父には遺産がほとんどない。父自身も、サービスの内容をよくわかってなさそうだ。解約したいのだが、どうすればいいか(息子)

▽母親が亡くなったので、生前に契約していた遺言信託で作った遺言を実行してもらいたい。しかし、担当者に母の死亡を伝えてから2週間経っても何もしてくれない(息子)

 遺言や相続に詳しい別の税理士は、そもそも、「銀行が手がける遺言信託は割高で、費用に見合ったメリットがあるか疑問です」と厳しい。

「サービス開始時にかかる手数料のほか、遺言の作成や保管、執行の際にもそれぞれ別途手数料がかかる。たとえば、遺言の執行手数料が遺産の額に応じて100万円を超えるサービスもあります。遺言信託は、弁護士などの『士業』も手がけることができますので、必ずしも銀行にこだわる必要はないと思います」

 銀行に任せれば倒産の可能性が低かったり、金融機関としてのブランド力や信用性が高かったりするなどのメリットもある。だが、相続人同士でトラブルが起きた場合には手を引かれてしまったり、途中で契約をやめると、解約金がかかったりする場合もある。金田万作弁護士はこう話す。

「費用や安心面などを考慮して検討すべき。利用する必要があるとしても、銀行と弁護士などのどちらがいいか、しっかり考える必要がある。余裕があれば両方に相談し、比べてみましょう」

 前出の板倉さんもこう注意を促す。

「どんな商品やサービスも、自分が理解できないものは買ってはいけません。わからないことがあったら、納得できるまで担当者に説明してもらいましょう」

 不慣れなのは当たり前。慎重に備えるようにしたい。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2021年2月5日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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