東尾修
東尾修
巨人コーチに就任した桑田真澄氏の現役時代 (c)朝日新聞社
巨人コーチに就任した桑田真澄氏の現役時代 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、就任した桑田真澄チーフコーチ補佐の「引き出し」に期待を寄せる。

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 巨人が12日、OBの桑田真澄が1軍の投手チーフコーチ補佐に就任したと発表した。記者会見では、野球界全般にある走り込みや投げ込み過多から脱却し「今の時代はテクノロジーの進化がある。科学的根拠を添えて指導したい」と話した。

 この発言に対して、みなさんの中にも「走り込みは必要あるのか、ないのか」といった思いもあるでしょう。私もいろいろな方から意見を聞かれてきた。私自身は「走り込みによる効果をその選手が実感できているのなら必要だし、違う部分で補強できるのなら、それでいい」と考えている。

 私の現役時代はウェートトレーニングは確立されていなかった。下半身強化といったら、ゴルフ場や海岸を走ることだった。それしか方法論がない時代なら「走り込みは必要」と答えるだろう。

 今はウェートトレーニングが一般的になり、細かい筋肉のパーツごとに鍛える術もある。長い時間走り込んで得るものよりも、短時間で効果を発揮できるトレーニング方法が確立されている。

 ただ、楽天の涌井秀章のように、いまだに走り込んで、下半身を作っている選手もいる。だから、走り込みは正解か、間違いかという議論は不毛である。その選手が、一番効果を発揮できると考えるトレーニングを実践すればよい。

 唯一、今も昔も変わらないことは「投手は下半身がしっかりしないと、いい球は投げられない」ということである。その方法論が以前とは比べものにならないくらい多岐にわたっている。だから、桑田コーチには、いろいろなトレーニング方法の引き出しを提示してもらいたいと思う。桑田だって、右ひじの手術を受けた後に「桑田ロード」と呼ばれる伝説を作ったくらい、黙々と走る毎日を送った。下半身強化の仕方は無数にあることを、選手個々の特徴、性格に合わせて伝えてもらうことを期待する。

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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