ジムのランニングマシンを使うこともあるが、基本は外を走る。女優として次にどんな職業を演じるかわからないので、走っているときも常に人間観察は欠かさない。演じるために身体を鍛えているといってもいい。

 映画の中で、土屋さんが演じた小春は「幸せになりたい」と願っていた。土屋さん自身は、今どんな瞬間に幸せを感じるのだろうか。「お芝居の現場で、共演者の方たちと心を通わせることができたときです。今回、娘役を演じたCOCO(ココ)ちゃんは、私の手が冷たかったときに、使い捨てカイロを持ってきて、『温めてあげる』って言って、私にカイロを渡して、自分の小さな手で、私の手を包んでくれた。そういう優しさに触れられることが、頑張るパワーになります。誰にとっても、守れる存在がいることって素敵ですよね。人のために頑張ることのほうが、長続きする気がします」

 そう言ってから、「あ」と一呼吸置いて、「でも、それも自分のためなのかな、結局は」と呟いた。

「基本は、自分の活動が、何かしら人のためになるといいなとは思いますけど、それが回り回って自分に何か返ってきたらラッキーだし、返ってこなくてもいい。そんな感じでしょうか」

 自由な時間は何を優先したいかという問いに、「運動。時間があったらゆっくり走って、ゆっくりお風呂に浸かりたい。それからぐっすり寝ることが、心身ともに気持ちよくいられる最高の時間です」と話す彼女は、心身ともに健やかそのものだった。(菊地陽子 構成/長沢明)

土屋太鳳(つちや・たお) 1995年生まれ。東京都出身。2005年芸能界デビュー。08年、黒沢清監督「トウキョウソナタ」で映画初出演。15年、NHK連続テレビ小説「まれ」で主演を務める。映画、ドラマ、舞台のみならず、ダンサーとしても様々なアーティストとコラボ経験を持つ。現在Netflix「今際の国のアリス」が配信中。公開待機作に、「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」など。

週刊朝日  2021年2月5日号より抜粋