元気だったころのキリン「桃花」 (c)朝日新聞社
元気だったころのキリン「桃花」 (c)朝日新聞社

 皇女の動物園に「麒麟(きりん)がくる」──。

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 昭和天皇の四女・池田厚子さん(89)が園長を務める岡山市の池田動物園。赤字経営が続く園を支援しようと地元が立ち上がり、キリンを園に贈呈するための募金をクラウドファンディング(CF)で呼びかけたところ、大成功を収めた。

 CFを主導したのは岡山青年会議所(JC)。昨年2月に、園の“看板娘”だったキリン「桃花」が死んだため、贈呈計画が始まった。計画を進めたJCの大森将平理事も、反響の大きさに驚いた。

「昨年12月1日にFCがスタートして1週間で、目標額の300万円を達成。今年1月10日までにおよそ608万円の募金が集まりました。おかげさまで『麒麟がくる』のキャッチコピーで話題を集めましたが、本家からクレームが来たらどうしよう、とヒヤヒヤしてます(笑)」

 池田動物園を応援する募金は過去にもあったが、インターネットで呼びかけたのは初めて。「池田動物園をおうえんする会」の杉原望事務局長は、ヤフーニュースで配信された園の経営危機を伝えた過去の記事も“追い風”だったのでは、とみる。

「コメント欄は、地元岡山だけでなく日本各地の方の心配する声であふれていた。若い世代は、皇女の存在を知らない人がほとんどです。経営難を下手に隠さず、2億5千万円の赤字を池田家が補填(ほてん)している現状などを正直に伝えたことで、皆さんにメッセージが届いたのだと思います」

 園にくるのは、1歳の雄のキリン、「サンタロウ」。お披露目は4月上旬の予定だ。

 今回は、交配目的なのでキリン自体は無料だが、飼育元である高知県立のいち動物公園(香南市)からの輸送コストに200万円、床暖房付きの獣舎の建築に1千万円などがかかる。このため、募金で不足する700万円はJCが出資した。

 動物園の経営は莫大なお金がかかるが、新型コロナウイルス下にあって、補助金のない私営はさらに厳しい。

 池田動物園は、集客を見込む昨春のゴールデンウィーク時期に緊急事態宣言で休園せざるを得ず、収益は例年の4割減となった。池田厚子さんは、コロナ禍で外出することはないが、園の敷地内にある自宅で過ごしているという。

「キリンの贈呈に、お礼を述べておられました」(園担当者)

 お披露目式には、元気な姿をみせてほしい。(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2021年2月5日号