際コーポレーション代表取締役社長の中島武氏 (同社提供)
際コーポレーション代表取締役社長の中島武氏 (同社提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の緊急事態宣言のもと、東京都は飲食店に午後8時までの営業短縮を呼びかけた。要請に応じれば1店舗あたり1日6万円を支給するもので、当初は個人店や中小企業に限定されたが、大手外食チェーンの訴えもあり、大手にも“時短協力金”の対象を広げた。

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 都へ請願書を提出した一人、中華料理「紅虎餃子房」など全国で直営飲食店286店を展開する「際コーポレーション」代表取締役社長、中島武氏(72)が本誌に胸の内を明かした。

「大手だろうが中小だろうが、街にあるお店に区別はありません。みんなで協力して新型コロナの感染拡大を防止するために、まずはその括りを外してもらいたいと訴えました」

 大手は当初、「経済的な余裕」などを理由に支給対象外となっていた。「とんでもない。会社全体としては年間で数十億円単位の赤字で、2020年は惨憺(さんたん)たる状況でした。大手は大勢の従業員を抱えている。家賃代もばかにならない。経済的に楽ということはまったくありません」

 こうした声を受けて都は、新たに1月22日から2月7日までの要請に応じた大手を含む事業者に1店舗あたり102万円の時短協力金支給を決定。それでも中島氏は、政府を含めた今回の対応に疑問が残ると話す。

「私たち飲食店の存在を汲んで素早く対応をしてくださったことには感謝しています。ですが、『飲食店』のみを時短要請の対象とすることについては、その根拠をより明確に示してほしいというのが偽らざる思いです」

 政府による2度目の緊急事態宣言以降、飲食店にとっては地獄絵図だ。「『午後8時以降の売り上げがなくなった』という単純計算では収まらない。行政から『外出するな』『ランチも控えろ』と再三呼びかけられ、開店以降の売り上げ全体が冷え込んでいます」

 そして行政に訴える。「飲食店が“感染源”になるというのなら、事実関係や根拠をより明確にしてほしい。いまは『営業時間の短縮』のみが要請され、現場が何をすべきか具体的な指示も全くありません。いたずらに時短だ、罰則だと言うのではなく、一定の基準のもと、安心してお店を開けられるガイドラインを作っていただきたい」

(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2021年2月5日号