五輪期間中の8月は各球団の主力選手が欠場することから、選手層の厚い巨人が優位に立つと予想されたが、中日にさらに引き離された。同年の中日は落合博満監督が就任1年目。就任記者会見で「補強は1年間やらない」と宣言して大きな反響を呼んだが、強力な投手陣と堅守を武器に有言実行の強さでリーグ優勝を飾った。

「史上最強打線」と形容された巨人が71勝64敗3分でV逸した事実が野球の奥深さを物語っている。

 他球団のスコアラーは当時の巨人をこう振り返っている。

「オールスターみたいなメンバーでしたからね。投手は気が抜けないですよ。ただ、一発だけに気を付ければそんなに大ケガしない。最悪、ソロ本塁打はOKで、3点以内に抑えればいいわけですから。打線で言えば横浜の『マシンガン打線』のほうが個人的には嫌だったです。本塁打はローズ以外にそこまで脅威じゃなかったけど、とにかくつながるし、気付けば大量失点になるケースが多々あった。機動力を使える選手も多いし、攻撃のバリエーションも多かった。西武の山賊打線も秋山翔吾、源田壮亮、外崎修汰、金子侑司と足を使える選手がいたけど、機動力は厄介ですよ。巨人の04年の打線は足に神経を使わなくて良かったのでその点は楽でしたね」

 強力打線の指針として、本塁打数や長打率が大きな目安になるが、機動力も重要なポイントになる。たとえ走らなくても、相手に重圧をかけることはできるからだ。リーグ連覇した昨季の巨人のチーム盗塁数は阪神と並ぶリーグトップタイの80盗塁。得点数もリーグトップの532点だった。対照的に、選手個々の能力は高いが4位に低迷したDeNAはリーグワーストの31盗塁。機動力に注目して野球観戦するのも面白いかもしれない。(牧忠則)

※週刊朝日オンライン限定記事